きのこ

日本から離れて一番食べるチャンスの無くなってしまったのが、何と言ってもきのこ類。
エノキダケの缶詰はあるけど、ビチャビチャした水煮みたいですごく美味しくない。
しめじ、舞茸、なめこなどは、もう何年も口にしていない。
椎茸はたまに乾燥したものや缶詰で食べることが出来る。
フランスではきのこを食べるけど、日本ほどではないだろう。
ケベックのきのこ事情は更に情けないのだが。


私は、なめこが一番好き。
なめこと言うと、日本に住んでいた時によく友達らと行った小さな居酒屋を思い出す。オバサン一人で切り盛りしていた店で、小ぎれいな雰囲気も好きだったし、そのオバサンの作るもの、と言っても別にそんな驚くようなものでもなく、ちっとも珍しくない献立だったけど、おにぎりや味噌汁、お新香などが美味しいのが一番気に入っていた。飲んだ一番最後に必ず大きな丼に入ったなめこ汁を出してくれた。お椀じゃなくて、丼なのだ。それもたっぷりと。そこにたくさんのなめこと豆腐と散らした葱が入っていて・・・今でもあの味は忘れられない。
オバサン、元気かな?


ケベックには、ほろ酔い気分になれるような居酒屋っていうのがなかなか無いのである。
日本人やアジア系の人が経営している店だったら可能かも知れないけれど、そうでない店はなんだか飲んだ気がしないのだ。な〜んかね、ほろ酔い気分になるのさえ許されない!みたいな雰囲気があって。放っておいてくれないっていう感じかな?上手く言えないんだけど・・・そう、ダラダラするのが許されないっていうか。あとあまりパブとかに食べ物を置いていないというのも大きな不満。パブではひたすら酒を飲むだけ。だから酔いが早い。あれって絶対に身体に良くない気がする。私は食べながらじゃないと飲めないので、滅多にケベックのパブには行かない。回りは猛々しく酔っ払ったのばっかりだから恐いし。以前、ケベック州最東端にあるマドレーヌ島のパブに行った時、置いてある食べ物がクラッカーだけと聞いて物凄く腹が立ったことがあった。どうして?と抗議すると、パブは食事をする場所ではないと言われた。酒と食事をはっきりと分けてしまうあの感覚も好きじゃない。四方八方海に囲まれて、美味しい魚介類が豊富なんだろうに・・・「同じ人間とは思えない」という感情は毎度のこと。向こうも私をそう思っていることだろう。




SDF

TVのフランスからの放送でSDF*1ドキュメンタリーを見た。
まったく身分を明かしていない二人の男性が22日間、SDFを装っての隠しカメラでの取材だった。シェルター各所や病院などでのありのままの対応が興味深かった。「ホームレスになって先ずすることは食べ物と寝る場所の確保から始まる」と、彼らはまず公衆電話から無料電話サービスで掛けられるホームレス救助会へ連絡。今自分のいる場所から一番近いシェルター場所を教えてもらい、そこに出向いて早速食料を確保。


Aシェルターは、全体的に清潔じゃなくて、シャワーも水温2℃のまさしく「水シャワー」、Bシェルターは場所も広いし、シャワーもぬるま湯でマシとか、少しずついろんなことが分かって来る。警察のバスが街中を何度も巡回して彼らを乗せてはシェルターに運ぶ。当然シェルターのベッドは足りずに、廊下に寝る人も多い。が、外よりは暖かい。また、保健所関係者が各シェルターを巡回して、風邪の予防接種を無料で提供する。気温が0〜3℃ぐらいでも路上に寝る人も多い。一番身体を寒さから守るのはダンボール。でもダンボールさえ彼ら同士で取り合いになるので、なかなか丁度いいダンボールを見付けるのが難儀だ。やっと見付けたダンボールに包まって寝ていると、ボランティアグループが巡回して来て、温かいスープを配りながら、先ず第一に身体の具合を訊く。


クリスマスイヴ前日からスタートして、クリスマス、大晦日、正月をSDFとして暮らす彼ら。少しずつ身体にはシラミも集ったりしてボリボリと身体を掻き毟りながら、総合病院の救急へ直行。そこでちゃんと治療を受け、薬を貰って病院を出る。シェルター以外にも、いろんな広場や教会でボランティアの人たちが、彼らに食事を提供する。いろんな食べ物の入ったビニール袋と温かいスープが貰える。これはケベックも同様なのだが、一箇所で全食事を提供するのではなく、例えば朝食はD通りのシェルターにて、昼食はK修道院で、夕食はF教会とL通りのシェルターにて、休日や年末年始には、S広場とC教会とW修道院だったら大丈夫などなど、ちゃんと割り当てがあるのだ。そういう情報はパンフレットの形でSDFの人たちに知らされる*2


集まって来る彼らの中にはもちろん女性も多い。子連れもいる。派手な金髪にフェイクファーの女性が彼らの列に並ぶ。すると口々に男性たちが「blonde」*3と呟く。プロヴァンスからやって来たという50代後半の女性は、アフリカ系のSDFを指差して「アフリカへ帰れ。ここはフランスだ。フランス人だけの場所だ」と叫ぶ。でも彼らにとって、パリのでSDF生活の方が、アフリカでの生活と比べたら天国のようなものなんだそうな。天国・・・SDF生活が天国・・・信じられない。SDFの顔ぶれの殆どがアフリカ系とアラブ系だと統計が語っていた。


とてもショックな場面があった。アジア系の男性*4が一人、SDFの列に並んでいるのだが、彼を見て回りのSDFの人たちが「彼は気の狂ってしまった日本人なんだよ」と言う。意味不明な呻いているような声をその日本人は口から発しているだけ。パリで精神に異常を来し、日本へ強制送還される日本人も少なくないと以前政府関係者から聞いたことがある。ケベックでも日本人のSDFを見掛けたことがある。仕事中のこと、突然日本語で話し掛けられたので何か質問かな?と応対したら「ボクはね、立派な浮浪者なんです」と、いやに歯切れのいい日本語で喋る姿が悲しかった。



SDFについて。フランスとケベックが仲良く並んでいる説明文だ → http://fr.wikipedia.org/wiki/Sans_domicile_fixe




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*1:Sans Domicile Fixeの略。フランス語圏で使われる「ホームレス」の意味。

*2:どうしてそんなにSDF情報に詳しいのか?とのお問い合わせを頂きましたが、ケベックモントリオールの二ヶ所の修道院でボランティアに参加しているから、です。モントリオールは遠距離ボランティアですけどね。

*3:売春婦を冷やかす時に時々使われる表現でもある。

*4:当然ながら顔には各自シェードが入っている。