3人の子供たち それぞれの夏

長男 28歳。
パリ在住2年になった。仕事が忙しく、今年の夏休みはケベックに帰って来れそうもないみたい。
専らスカイプで息子と話すのが日課だ。
長い間、親一人子一人で来た上に、歳の差が21歳だけなので、まるで姉弟のようだ。
パリ市のど真ん中で暮らしているのだが、パリが大好きだと言う。若いうちは、大都会で暮らすのが好ましいのかも知れない。パリでの生活、パリの水が余程合っているようで、スカイプで見る息子は実に生き生きとしている。
日本の母も、孫とスカイプで話すのが唯一の楽しみで、「Jちゃん(息子)、肌がつやつやとして嬉々として張り切っている様子が本当に嬉しい」そうである。
そんな息子の姿を見ていると、若い頃の私の姿と重なるのだ。私がパリに滞在していたのは20代前半の頃だったが、恐さ知らずだったあの頃をいとおしく思い出す。夢いっぱいにパリの街を闊歩して、なんでもかんでも吸収して、そして、きらきらと恋していた。あのままパリで生きたかったその私の想いを、今こうして我が息子に託しているのかも知れない。
えっ!?




二男 17歳。この夏に18歳になる。
学校は長い夏休みに入った。
今までの人使いの荒いレストランを辞め、大きなファミリーレストランの厨房でシェフのアシスタントとして働いている。
長男は、アルバイトにしても、デスクワーク一筋で、学生時代からずっと政府で働いていたが、二男はちょっと違っていて、デスクワークよりも、身体を動かす仕事の方が性に合っているようだ。
先ず最初に近所のレストランで皿洗いから始まり、次はスキー場の厨房でシェフのアシスタントをやっていた。でも、スキー場は冬だけの営業なので、夏は他のレストランを探していたのだが、いつの間に自分で仕事を見つけて来た。二男は友人が多いので、彼らを通しての紹介などもだいぶあるらしい。
それでも、最初のレストランの皿洗いを片手間にずっと続けていたのだが、皿洗いからいつの間に、最初の契約とは全然違うトイレ掃除や地下室の掃除をさせられていたらしい。あまり良い評判を聞かないここのオーナー連中であったのが、親として気にはなっていたのだが、やっぱりその悪評通りだったらしい。でも、そんな辛いことは、二男は決して口にすることも無く、黙々と働き続けて来た。過去を振り返ると、訳も無くイライラしているような時もあったのだが、それにはちゃんと理由があったんだね。
もうすっかり運転も板に付き。




長女 13歳。
夏休み前の学年末試験に追われる毎日だ。
この秋から中学2年生になる。
まだ年齢的にアルバイトなどは出来ないが、芝刈りとか犬の散歩などの簡単な労働?は可能だ。そのために、集合ポストには、まだ小学生のうちから、自分を売り込む呼び掛けが貼られている。

娘の嫌いな下級生(小学6年生)の売込みが貼ってあるらしく、ポストの前を通る度に娘は豪く気にしている。
「どうして嫌いなの?偉いじゃないの、少しでも働こうとしているなんて」「だって彼は嘘つきで有名なの。嫌っているのは私だけじゃない。みんなから嫌われているよ」「ふ〜ん、嘘つきなんだ・・・名前は何ていうの?」「ジャコブ。あんなマシュマロみたいな手で芝刈りとか出来ないと思うな」
ジャコブくん、だいぶ嫌われ者のようだが、それにもめげずに、芝刈りなどの売込みをしている。その文面が、「お給金は交渉次第」「連絡はお早めに」と書かれていて、なかなか生意気そうなマシュマロ小僧である。

(ジャコブくん、綴りが間違ってるよ〜)
売り込み文面の下には、自分の電話番号を書いたビラビラが付いていて、興味のある人はそれを千切って持って行くわけだが、「もう雨で紙がビチョビチョ。この前は風で飛ばされていたよ」と娘。それでもジャコブくん、なかなかしぶとく頑張っているようだ。ところで「ジャコブくんってどんな顔してるの?」と娘に訊くと、「ふふふ」と笑いながら「ヴィオレットさんにそっくりなの〜」「え!?なんだってぇ?」ヴィオレットさんというのは、父のいる介護ハウスにボランティアで通っている80代のおばあちゃんだ・・・笑い過ぎて腹が痛くなった。
娘の同級生の中には、家業を手伝ったり、ベビーシッターをやったりしているのもいる。ベビーシッターは、責任重大なので、まだ私は許可していない。一応、学校の課外授業で、ベビーシッターの子供用ライセンスは取得してはいるのだが、その授業の実習で使った人形の赤ちゃんと本物の赤ちゃんとは全く違うからね。
それにしても、ついこの間まで赤ちゃんだった娘がベビーシッターをする年齢になっているとは・・・子供の成長はほ〜んとあっという間ですね。
お兄ちゃんと一緒にドライブするのが楽しみ♪


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