やさしさ

今までスクールバスを使っていた二男が、高校からは市営バスで通学している。スクールバスというのは、原則は義務教育期間だけのものだから。
今日もいつものようにバスに乗っていると、ある停留所で、足が不自由でバスの階段を上れないおばあさんが、運転手に「助けて下さい」と声を掛けたら、即座に、運転手だけじゃなく、回りの乗客たちが皆で助けたという話をしていた。
それでふと思い出したのが、数日前に日本の母が話していたことだが・・・
母もよく移動は神奈中バスという市内バスを使っているそうだが、先日、片足が上がらないので、階段の上るのだけちょっと手を貸してくれませんか?と頼んでいるおばあさんがいて、それなのに運転手がただ一言「出来ません」と答えたそうだ。するとそれを見兼ねた乗客たちが数人でおばあさんを助けたらしい。その分、給料を貰っていないから出来ませんということなのか?それ以前に、人間として、人に親切にするということを忘れている運転手なんだろうね。これは、国籍や人種とは関係なく、たぶん性格上の問題であろう。


日本とは随分と違うなと感じるのが、こちらの医師たちだ。
先ず最初に会うと握手から始まり、横になって診察を受けた後に起き上がる際、必ず医師が抱き起こしてくれる。日本のように看護師が診察室にいることは通常のクリニックでは殆ど無く、医師が何から何まで自分でする場合が多いのだが、忙しいだろうに、必ず起き上がるのに手を貸してくれる。そして、診察室を出る時にまた握手。診察中は、私が日本人だと分かると、知っている限りの日本語を使ってみたり、「クロサワ」や「ミシマ」の話をしたり・・・こんなやり取りで、半ば病も治ってしまっている、そんな気がするのだ。


こんな世知辛い世の中だからこそ、ほんの小さな触れ合い、親切、微笑みなどが、何だかとても嬉しく感じるのだ。妬みや苛め、睨み合いばかりの世の中では、全体の平和はまず無理であろう。一人一人のやさしさが、地球を救っているのかも知れないね。