動物と子供

よく我が家では、庭先に出ていても、近所の犬が通り掛かりに寄り道して、何をするわけでもなく私の顔を見上げたり、車の下では、よくどこかの猫が此方をジッと見ながら潜んでいたりする。
どうしてこう、うちには動物が近付いて来るんだろう。
私は、動物や子供が苦手だ。
辛うじて犬だけは、飼わずにただ見るのだけは好きだが、それでも好きな種類は決まっている。
どの犬も可愛いとは思わない。
以前、観光中にライオンみたいな犬が現れ、「恐いよ〜」と言いつつ、お客さんを楯にしてしまったことがある。恥ずかしい思い出だ。
それに、どんな犬でも、走って此方に向って来る姿はとても恐い。咄嗟に私も逃げる体勢を取る。「それがよくないんだよ。だから犬たちから冷やかされるんだよ」とよく回りから言われる。
昔一度だけ犬を飼っていたことがある。エルザという犬だった。エルザだけは恐くなかった。
エルザの死に遭ってから、犬は二度と飼えなくなってしまった。


猫は問題外だ。音も無く近寄って来て、足元に絡まり付いたり、ぶつかって来たりするのが小さい頃から恐かった。今でも恐いのは変わらず。どういうわけか、弾丸のように吹っ飛んで来る猫が私にぶつかることがある。あれって結構痛いんですよ。青アザになったこともあるし。たぶん私も猫たちから嫌われているんだろう。
動物との共存なんか絶対に出来ない。キッチンなんかに猫がうろうろしている家などは、見ただけで卒倒しそうになる。先日、猫はそもそも人間を殺そうとする習性があると読んで以来、益々恐ろしくなった。あれは、本当の話なんだろうか。信じたくない。


野生の動物や動物園の動物などにもあまり興味が無い。というか恐い。
以前、わが家の庭に熊が棲み付いたことがあった。「あの家では庭で熊を飼っている」と通報を受けた市役所職員と警察官が恐る恐るやって来て、「こんなことは非常に稀なことです」と言われた。犬さえも恐がる私に向かって「熊を飼っているのですか?」って・・・絶句する他ないだろう。肝心の私たち家族は、熊が棲んでいることに気付かなかったのである。今でも、その時の洞穴みたいな跡が庭に残っているけどね。


よく友人たちやお客さん、仕事仲間たちから「動物好きだね」と言われる。
どうしてそんな風に見られるんだろう。犬が歩いていると私は必ずそれを目で追うらしい。そうだろうか?自分では気付かないのだが。噛み付かれると恐いので、決して初対面の犬を撫でたりはしない、出来ない。
観光中に話す内容も、動物関連が多いと言われる。わが家の駐車場で大きな熊やスカンクと鉢合わせしたことがあるという話をする程度なのだが。しかも愛でる気持ちなど一切無く、「本当に迷惑だった」という気持ちを込めて話しているつもりなのだが。
苦手というよりも、根本的には私は動物を恐がっているのかも知れない。
心の底から恐がっているように自分でも感じるのだ。


空港や駅などに座っていると、必ずといっていいほど子供が走っていたりする。
広い場所を心置きなく歩き回っているヨチヨチ歩きの赤ん坊なんかもいたりする。
よく「まぁ、可愛い〜」と大人たちは優しく微笑みかけるが、私は睨みつけたりする。微笑んだりなんか絶対にしない。すると、大半の子供たちが失望感いっぱいの顔をして私を凝視したりする。自分の手に持った玩具を私に見せようとしたりするのもいる。それでも無視したりすると、今度は隣に座ったりする。どうしてあんなに此方を気にするのか。不思議だ。
つまり私も子供そのものなんだろうと思う。ずっと一生このままなのだろうか。
わが家の子供たちがとても自立心旺盛なのは、子供に育てられたからなのか。
納得。