朝の烏賊騒動から007の夕べまで

嗚呼!烏賊ちゃん

今朝8時を回った頃、地元の郵便局から電話が来た。
「あ、マダム?」
いつもの郵便局のおばさんの声だ、でも少し笑っている。
「なんでしょうか?」
「大至急、荷物を取りに来て頂けますか?あの・・・においが・・・ね・・・」
「におい?」
嫌な予感がした。
この辺りの郵便システムというのは、まず近所にある集合ポスト(各家から1km以内が原則)に郵便物を取りに行く。
各自が鍵を持っている。そこには宣伝ちらしなどが一纏めになった袋も沢山置いてあって各自が自由に持って来る。
そこにも荷物用のポストがあるのだが、大きい荷物は入らないので、そういう時には、郵便局に荷物が届いている旨の連絡はがきがポストに入っている。それを持って地元の郵便局まで取りに行くのだ。
この方法は荷物に限らず、書留郵便などにも適用する。
今朝のように郵便局から直接電話が来るなどほんとに珍しいのだ。
早速、郵便局へ向かう車の中で〈におい?何のにおいだろう?まさか納豆?いやいや、あり得んなあ〉考え巡らす。
ちなみに郵便局までの距離は4km弱。
郵便局のおばさんが笑いながら出て来て
「ちょっと待ってね、特別な部屋に置いてあるから」
「?」
あまりにもにおいがすごくて、局員たちが困り果て、ずっと離れた部屋に置いてあるというのだ。
そんなににおうのか?一体なんだろう?
大きなダンボール箱が出て来ると、四隅に茶色の液体が染み出て、確かにすごいにおいだ。
しかし、母はそんな漏れるようなものを送ったとは一言も言っていない。
家に帰って箱を開けると、そこには潰れた烏賊の缶詰があった。幾つも入っていたが潰れていたのは一缶だった。
それも缶切り無しで開けられるリップル付きのものだ。
またそれがみりんや砂糖が入っているので、汁がベタベタでどうしようもない。
一緒にビデオが何巻も入っていた。新聞紙にはなんと汁溜りまで出来ている。
新聞紙はあきらめて捨てようと思ったがふと見ると『欧米化した和食が・・・』などという見出しが目に入り、これでは捨てられないじゃないか、何としてでも読みたいし。
本や海苔などはビニールに包んであったので助かった。
104歳のばあ様まで烏賊の汁まみれになるところだったよ、・・・って写真だけどね。
ビデオも思ったほどの被害ではなかった。が、しばらくは「烏賊のかほり」馨しきビデオで我慢だ。
私はまだいいが、あまり魚の得意じゃないケベック人たちには、保管したり運んだりが難儀だったであろう。
「うわ〜っ臭っ!!」なんて皆から嫌われながらの長旅だったのであろう、この哀れな荷物よ。
実にご苦労であった。