怖い話≪こっくりさん編≫ 

といってもそんなに怖い話でもないのだが・・・
よく小学生の頃、クラスでこっくりさんが流行って、休み時間になると誰ともなくあのこっくりボードなるものを作って、みんなで輪になって「わー」だの「きゃー」だの騒いだものだ。
その頃からいつ同じ質問をしても同じ回答が出るものが私にはいくつかあった。
自分でやっても友達がやっても誰がやっても同じ回答だったのだ。
「何歳で結婚しますか?」
「20歳」
「何人子供が生まれますか?」
「3人」
「将来どこで生活しますか?」
「カナダ」
この歳になっても時々この事を思い出す。
幼友達や親はこの事を知っていて、「あれって当たっていたよねー」と言われることがある。


こちらにもこっくりさんに相当する遊びがあり、長男が小学生の時ブームになった。
近所の同級生の家ではあまりにも当たるので、家族総出で夢中になっていた。
なんでもピエールだかロベールだか生前囚人だったという男の霊が、盛んに降りてきたそうである。
まるで対面して話しているような臨場感があり、その同級生のご両親はいよいよ回りの人達にも声を掛け、降霊術のようなことを始めたのだ。
あのよく恐怖映画なんかでみるような丸くなってテーブルの回りに座って隣の人と手をつないで、何だかんだと呪文みたいなのを唱えるあれである。
うちにもお誘いの声が掛かった。
「いやーよく当たるんですよ、素晴らしいからぜひお越し下さい!」
そこのご主人が興奮気味に電話して来た。
もちろんお断りした。
夫曰く、死後いつまでもこの世にウロウロしているのは間違いなく悪霊だ、だから注意しないといけない、悪魔との接触はとても恐ろしいことなのだと聞いていた。
夫は私と結婚する前はカトリックの神父だったので悪霊関係には詳しい。『エクソシスト』の様な実話はたくさんあるという。
実際、カトリック神父の中にはエクソシストスペシャリストとして選ばれる神父もいて、除霊するための技術も持っているらしい。
夫はハッキリとは言わないが、神父にはその技術が多かれ少なかれあるそうだ。確かに神学生の授業内容には、そういう種のものがあると以前聞いたことがある。
また悪魔は、聖職者に対しては特に激しい恨みを持っているそうで、いろいろな嫌がらせを仕掛けて来るそうだ。
睡眠中にベッドをグルッとひっくり返されるなんてことは珍しくないのだそうだ。


案の定、その家では間もなくすると一家離散という惨劇が待っていた。
誰しも羨むような仲睦まじいご夫婦があっという間に離婚、2人の娘さんたちもそれぞれの人生の中で散々な目にあった。
離婚後その家族はバラバラになって引っ越して行き、今はその家には別な家族が住んでいるが、今でも前を車で通るとゾッとする。
その悪霊に呪われてしまった家族としか思えない。
家庭的な優しいご主人、物静かな主婦の鑑みたいな奥様、可愛らしい娘さんふたり、犬や猫もいた。
何度か私の両親まで食事にお呼ばれもした。
だから両親もこちらに来る度に彼らのことをよく気にして「元気にしてるのかなあ」と案じている。
元通りになるのは不可能なのだろうか。