イタリアン先生

今日は朝から総合病院内にある歯科に行っていた。
主治医はイタリア系の心やさしいオジサンだ。
私がこんな性格なので、どうしてもこういうおっとり型のやさしい人格者が回りには多い。
以前、ラバル大学内の歯科で、抜歯が嫌だと大暴れした時に、大学教授であるこのイタリアン先生が颯爽と登場し、それまで私と言い合いしていた肉団子みたいな歯医者と入れ替わって、それはそれはやさしく静かに私を説得してくれたのだ。
私は異常なくらい恐がり屋で、3人も子供を出産しているのに、歯や耳、目などの治療がとても苦手だ。イタリアン先生は、ケベックの歯科医にしては珍しくあまり抜歯を勧めないタイプだ。それでも、どうしても抜かなければならない歯が1本あるということ。彼が言うことは全面的に私は信じているし、そのやさしさに心打たれたので、彼の前では素直になれる。
イタリアン先生は、以前、ご自分の出身校であるマギル大学で、日本語クラスに通っていたことがあったそうで、ご本人は「ほんの少しだけ」と言っているが、かなり日本語が話せるのだ。「日本語がお上手ですね」と誉めると、「とんでもない。大したこと無いです。恥ずかしいです」とスラスラ返答するのであるよ。私がドクター肉団子と喧嘩して泣いている時に、最初にイタリアン先生が私を宥めた言葉がなんと日本語だったのだ。それまでシクシク泣いていた私は、耳元で「大丈夫。恐くないから」と流暢な日本語で突然囁かれて、ビックリして見上げるとイタリアン先生がやさしい笑顔で私を見ていたのだ。その瞬間から、彼を主治医として指名(おお、まるでホストクラブじゃないか)させて頂いたわけです。