数独と漢字

最近、小学4年生の娘にしつこく電話が来る。
相手はやはり同年のレミという男の子だ。
どんな顔したガキなんだと思い、娘からクラスの集合写真を見せてもらうと、ネックレスなんかしていかにもナマイキそうだ。
先日の市役所でのダンスパーティーから、ヘンにしつこいんだそうである。
なにしろ娘には二人の兄貴と、壁のような母がいる。
こりゃ、ガード固いぞ、レミくん。
その集合写真もブログに載せようと接写(どうしたことか「拙者」といつも変換される。【武士などの自分の謙称】とある。なるほどね。自分の呼び名にするかな、今後)してみたのだが、なかなかうまくいかない。
このネックレスボーイを皆さんに披露したいのになあ・・・。
連日こんなに寒くて殆ど外にも出られずにいる私にとって、退屈を紛らわしてくれるような笑えるものをこうして日々探しているのだ。


昨日、州会議事堂に行って来た息子が、デモ隊に建物を包囲され、なかなか外に出られなかったそうだ。
すでに公開デモは終わったはずなのに、まだこうしていつまでも学校休んでデモに励む先生が多いらしい。
州の話では、昨日でもまだ200人ほどが参加していたらしい。


午後からはまた恒例の裁判所通いだったらしいが、息子が帰宅してからの先ず第一声が「どこ行っても、数独が人気なんだよ」
いつも新聞から数独の部分を主人が切り抜いて私にくれるのだが、やはりそうやって切り抜いて、職場でも手放さない人が多いらしい。
母と同じものを手にしてウロウロしている公務員たちに、息子はすぐに気付いたようだ。
息子が日本人だと分かると、次に必ず「じゃあ、数独知ってますか?」と最近訊かれることが多いという。
「はい、私の母もあなた同様、そうして切り抜きを持って歩いてます」と応えると、一斉に皆さんは「おお」と感激するらしい。
『クリスマスプレゼントに数独を!』といった宣伝もあるほどで、確かに本屋へ行くと、数独関係の本がプレゼント用にずらりと並んでいる。大概、「簡単」「中ぐらい」「難しい」の3段階になっているが、私の経験からいうとこれは当てにならない。「むずかしい」レベルがたった15分で終了、「中ぐらい」が丸一日掛かったというがあったから。本の表紙には“SUDOKU”とアルファベットで書かれているが、
中を開くとちゃんと「数独」と漢字で書いてあり、「日本語で書くとこうなるのだ」と実に厳かに説明されている。


こちらの人は漢字が大好きだ。自分の名前を漢字で書いてほしいなんていう無茶なリクエストも時々ある。
だいたい「ピエール」だの「ジャン・フランソワ」だの「パトリス」だの、どうやって漢字化すればいいのか?
以前「ジャンヌダルク」という名の女性からも漢字化を依頼されたことがあった。
80代の女性だったが、自分の名前を漢字にして、それもあんな歴史的なカッコイイ名前を漢字になんかして、その後どうされたのだろう、ジャンヌダルクさんよ!
漢字化する場合、一文字何ドルと計算するので、これでも結構商売は成り立つ。
以前お客さんから「テレビを見ていたらスゴイ漢字が出て来て驚きでしたよ、なんか5、6人が並んでヨガだかエアロビクスだかやってるんだけど、全員黒のTシャツに白い字で大きく〔精力〕なんて書いてあるから笑っちゃって・・・・あれって意味解っていないんでしょう?みんな真面目な顔してやってたし・・・」
きっとスピリットパワーなんて言葉を無理して漢字にしたのだろうが、私たち日本人にとって、いきなり〔精力〕なんて書かれたり、言われたりしたら、返す言葉もない。
なんでも白黒はっきりさせたがる欧米人らから「どうやら私たちの辞書には無い意味があるようですが、それをここではっきりと、解り易いように説明して下さい!」なんて大勢のケベック人の前でなんか言われたりしたら、ものすごくイヤだなあ、どうしよう・・・。


「あなたはそれが好きなんですか?キライなんですか?」
「あなたはそれに賛成ですか?反対ですか?」
「あなたはどう思いますか?あなたの意見をここで聞かせて下さい」
まずいつもなんでもクリアな彼らにとって、今ここではそれははっきりさせたくないなあ・・・とか、まあどうってことないっていうか・・・とか、好きっていえば好きだしキライっていえばキライだし・・・なんていう回答は全く理解出来ないのだ。
有耶無耶にしておくことが解決策という場合も多々あるのだよ、ケベック人諸君よ!
「そうやってセカセカと結果を追求しないで下さいよ、私ら日本人には有耶無耶というグレー色の部分そのものが回答となる場合が多いのだから」(と返答すること自体が疲れるのだ。日本人同士には必要ない会話だ)と伝えると、今から10年前だったら露骨にヘンな顔をされたが、日本ブームといわれる今となっては、逆に感心されたり、「うーむ、日本人とは・・・なるほどね・・・」と考え込んだりされるようになった。
これも進歩と呼んでいいだろう。