食欲の秋

日本の味を求めて

ご飯に味噌汁、梅干しに緑茶。
これが103歳の祖母の食卓には、いつもあったような気がする。


こんな当たり前の日本食が海外ではなかなか難しい。
私がケベックに住み始めた頃は、まだ丸米(長米ではおにぎりは作れない)や味噌が手に入らず、いちいちモントリオールまで買出しに行かなければならなかった。
今はだいぶいろんな物が手に入るようにはなったが、
先日久し振りにモントリオールの韓国人経営の食材店に行ってみた。


ちなみに我が家から車で片道3時間の距離だ。
そこでふと気が付いたのだが、日本人がわあー!と感激して飛びつく商品はものすごく高値にしてあるのだ。
それが小憎らしいほど日本人を知り尽くしている感があり、弱みに付け込まれている気分にもなる。
例えばカレーのルウーなども日本製のものは500円なんて信じられない値段になっており、韓国製(これが妙に薄くて超不味いのである)のは100円ぐらいだ。
他にもおでんの具、梅干し、タコの刺身、ししゃも、明太子、ちりめんじゃこ、めんつゆ、麦茶、日本製の味噌、たこ焼き、冷凍枝豆、たい焼き、カルピスなどに高値が付いている。
仕方が無いので、大豆ごろごろの韓国製味噌を大量に買って来たことを日本の母に話したら、電話口で泣かれてしまった。
食べたい!喉から手が出るほどほしい!という物が高値になっているというのは本当につらくて悲しい。
これも一種の人種差別かも知れない。
店内を歩いていると不意に涙が出て来た。



以前梅干しを自分で作ってみようと思い立ち、アンズのような果物を塩漬けにしたり日に当てたりしてみたが、うまくいかなかった。
ただ不思議なことに、昔祖母の家の縁側にあった土用干しの梅のにおいがした。
紫蘇の葉なんかもちろん無い。
日本に住んでいた時には八百屋の店先で梅や紫蘇に目を向けたこともなかったのに。
また今年もこの不思議な梅干しに挑戦してみようかなあ。
糠漬けは友達から糠を分けて貰って作った。
日本のようなナスやキュウリは無いので、ピクルス用の小さなキュウリを使う。
細いものであれば美味しい。
太いものは化け物の様で腹立たしく不味い。
大根や里芋も簡単には手に入らない。
里芋と日本の霜降りで贅沢な芋煮鍋を食べたい。
こうして日本を離れている間に美味しいものを食べ逃しているのかと思うとイライラする!
あー食欲の秋である。