『かもめ食堂』
日本からの雑誌や新聞などを隅々まで読んだりしていて、ふと見掛ける、映画やドラマなどの宣伝。
日本に住んでいれば、放映日をチェックしたり、録画したり、うっかり見逃しちゃったら再放送だってあるし、映画館に行ったり、DVDを借りたりして、気になる作品を鑑賞出来るけれど、こうして海外に住んでいるとそれがなかなか出来ない。海外、と一口に言っても、特に私が住んでいるような、日本文化が殆ど入って来ていない場所に住んでいると尚更である。「いいな、見たいな」とずっと思い続け、そのうち次第に諦めてしまう。今までずっとその連続だった。
どうしても気になる作品は、今までは日本に住む母に録画して貰っていたのだが、途中の話が幾つか抜けてしまったり、最終回まで録画されていなかったりと、それが親子喧嘩にまで発展することもあった。その点、弟が録画してくれたものは、まるで販売品のようにきちんと順を追って録画され、CMなどもきれいに抜かれていて、今でもわが家のギャラリー蔵を成している部分だ。
ところが最近、ネットで映画やドラマを見ることが出来るようになっているのを知って、もう時間も忘れてすっかり嵌っている。
友達から聞いて初めて『かもめ食堂』がネットで見られることを教えて貰った。
一気に見終えてふと時計を見ると午前2時を回っていた。
いいね、日本のソウルフードという言葉。
人から作って貰うのが一番美味しい。これ本当!
私のような主婦にとっては特にそうではないだろうか?
お茶一つにしても、人に淹れて貰うのは本当に美味しいのだ。
最近ではよく娘がお茶を入れてくれるし、二男がスパゲティーを作ってくれる。
時々は「なんじゃこりゃ?」ってのもあるけど、でもやっぱり嬉しい。
私はあまり料理は好きでも無いし、得意でも無いが、でも最後まで生きている限り、自分で自分の食べるものぐらいは作れるようでありたい。自分の食べたいものを自分で作れたらいい。
いくら人から作って貰うのが美味しいと言っても、例えばこっちの老人ホームになんか入ってしまうと、当然毎日の食事は口に合わないだろうと思う。どんなに美味しくても、クリームソースが続いたらゲンナリしてしまうだろう。ご飯と味噌汁、海苔や醤油がもし身の回りから消えてしまったら、もう生きる気力さえ失くすだろう。ごくごく当たり前の献立しか私には作れないが、やはり生涯食べなれたものを食べて暮らしたい。
(ちょっと余談)現在、ケベックの老人ホームにいるわが父は、なんと和食が駄目なのだ。特に、漬物や焼魚、味噌汁などが苦手というちょっと変わった日本人だ。それが幸いして現在に至っているようなものだ。だから父は若い頃から、酒を飲む時も、あまり一緒に何かを食べたりせずに、ガンガンと酒だけ飲むという、とても理想的ではない酒の飲み方をしていた。これが現在の父の病を作り出した一番の原因でもある。おでんや焼き鳥などと一緒に酒を飲むことが出来ない父だった。私が社会人になった時、お互い職場から近い浜松町で待ち合わせてどこかで飲んでいこうかという話になった時、父は「居酒屋だけは止めてくれ」と私に言った。じゃぁ一体どこで飲むんだと訊くと、ホテルのバーで飲みたいという。要するに父は腹の足しになるようなメニューもちゃんと揃っているようなところで飲むのが苦手という、日本人にはあまりいないタイプだった。
以前ケベックで日本料理を教えていた時、学ぶケベック人たちを見ていると、ただ単にレシピを習得するだけでは無く、日本人の哲学、心意気など、スピリチュアルなものも一緒に学ぼうとしている姿が印象的だった。あれは、日本食独特のものであろう。私たちが何気に食べているものが、彼らにとっては非常に神聖なるもので、豆腐やそうめん、寿司やおにぎりなどは、そう言った意味で特に人気があった。神妙な顔をして湯豆腐を恭しく食べる姿には、滑稽でもあるが、一種の感動もあった。
日本人の発想にとても興味を持っている欧米人は多い。それを彼らに伝えるのは、もちろん言葉も大事だが、そう、やっぱり心と心の通じ合いが一番、かな?そんなことをいろいろと考えながら見た作品でした、『かもめ食堂』。
正しい日本語と折り目正しい出演者たちの態度にも好感が持てた。特に私はもたいまさこさんが好き。身体全体で演じられる珍しい女優さんだと思う。インテリアも一つ一つが素敵。こうした夏のフィンランドもいいけど、一度はここでクリスマスを過ごしてみたい。
以前うちの親が、「かもめの食堂」と呼んでいたことがあった。
「の」の字一つでだいぶ意味も違って来ちゃうんだなぁと痛感した。
たぶんこの映画、うちの夫が好きかも知れない。
彼の生き方が、この主人公と重なる。
物事に動じない、己の道そのもの、相手が変わるまで辛抱強く待つ、と言ってそれが大きなストレスにもならず、苦しみや痛みは誰にも告げずに静かに飲み込んでしまう、飄々とした風貌、などなど。
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