ケベックから見たパリ

今まではいつも日本から行っていたパリだったが、今回はケベックから、実に18年振りのパリだった。
変わり果てたパリ、という印象が強かった。とにかく移民が信じられないくらいに増えている。本当のフランス人人口が減ってしまったような気がする。東欧人、ユダヤ人、スラブ系、北アフリカ系、アラブ系、中国人などが以前とは比べにならないほどの増え方だ。特に東欧人、それもロシア人やハンガリー人が圧倒的に増えている。彼らは白人が殆どなので、一見フランス人と見分けが付かない。訛りのあるフランス語で初めて気付く。そのせいか、ケベックよりもフランス語が通じ難いという皮肉な社会にもなっている。
道路など公共の場の汚さにも驚いた。空港で何度も見かけたのが、移民たちのどうでもいいダラダラとした清掃状態。華やかな道路から一本中に入ると、そこには犬のフンや吐瀉物、ゴミが散乱している。またここにもゴミが…と思うとそれはビニールや布切れなどを被った浮浪者だったりする。
ハムやチーズなどの販売・設置の仕方にも疑問を持った。保存温度は、ケベックでは信じられない「常温」のところが殆ど。バゲットサンドイッチがいい例だ。ハエも自由自在の状況である。レストランなどの衛生基準も甘い。ディッシュウォッシャーではなく、なんと未だに手で洗って(それもよく見ていると洗剤さえも使わずに)汚らしい布巾で拭っているところを各所で見掛けた。
ろくに綺麗なフランス語も喋れないのに、ツッケンドンな態度の従業員(当然、後進国からの移民)も多い。パリの人たちは教科書のような綺麗なフランス語を話すので耳には心地良いけれど、口の悪い人も多く、攻撃的で早口で、返答に困るような、真っ直ぐに切り込んでくるような会話の仕方もかなり気に障る。なるほど、これではケベック人と喧嘩にもなるわけだ。ま、ケベックにも口の悪いのはいるけどね。フランス系ってそもそも屁理屈屋が多いし。
しかし、あんなに清潔で安全な日本からやって来る人の中には、この現状に耐えられずに病気になってしまう人も多いと聞く。それでパリ症候群なわけなのか。日本がいかに素晴らしい国かしみじみと思い知らされた今回の旅行でもあった。
さて、こんなパリだけど、長男はえらく気に入っている様子だ。幾人かのビジネスや大学関係者たちと知り合いになったようで、帰って来てからもずっとメールで彼らと話し込んでいる。ギヨームともだいぶビジネスの話で盛り上がっているようで、ギヨームのこれからのプロジェクトについて何やら熱心に、私は完全に仲間外れ状態で、私のヘアダイ中に髪の色なんかそっちのけで話し込んでいた。私は数冊のELLEと熱いコーヒーだけあてがわれて、染料で固められた頭にチョンチョンと筆や長いクシを4本ぐらい崩れ芸者よろしく、ただぼ〜っと座っている他無かったのである。
ギヨームと私が初めて出会った時、長男はまだ1歳だった。あの時の赤ちゃんが背広なんか着込んでたいそう大人に成長したものだ。