ハロウィーンの思い出

毎年ハロウィーンになると思い出すことがある。先日のブログに書こうと思っていてすっかり忘れていた。
あれは4、5年前のことだ、午後3時を過ぎた頃にもう早々とハロウィーンの訪問者が…と玄関を開けると、そこには小学生の男の子と60代後半のおジジが立っていた。車が道路に止まっている。そのおジジの格好に私はしばし目を奪われてしまった。なんともいやらしいピンク色のネグリジェ姿に、ごま塩頭の普通のおジジヘアに、紫や朱色や黄色を使った化け物のような化粧、妙に赤い口紅の回りには薄っすらと髭が見える。だいたい変装した大人が子供と同行するのは大概幼稚園児の母親ぐらいというのが普通で、こんなおジジが、それもこんなすごい変装して子供に、いや、孫に付き添うなんてこと自体が珍しいのである。
さて、私が呆気にとられているとそのおジジが口を開いた。
「お宅の土地に車を駐車していいかね?」
「え?うちの土地に?どうしてですか?」
「ここに止めておいてこの子(孫)とこの辺りを回りたいんでね」
「ああ、それだったら道路に止めたままで大丈夫ですよ」
するとおジジ、急に私の顔を睨みつけるようにして
「なんだ!止めさせてくれないのか!?」
「いや、だから道路にそのままで大丈夫と・・・」
「あ〜あ〜、それじゃぁいいよ!ふん!意地悪女!ね、そうだろう?全く呆れるよ」なんて孫にブツブツ言いながら車ごとどこかに行ってしまった。道路駐車規制が厳しく、狭苦しい住宅街だったらまだしも、こんな何も無い山の中で他人の土地に車を止めたいなんて、非常識この上ないことだ。何か言い返してやろうかと思ったが、こんな見るからに変態そうな人間だもの、何を仕返しされるか分からないので黙って玄関を閉めた。
あんな妙な格好で、妙なことを言い出す人がうちを訪ねて来たのは後にも先にもこれ一度きりである。
確かに可笑しかったけど、でもなんか不気味で不可解な出来事だった。
それにしてもあの格好は一体何だったのか?普通のおジジスタイルの上に無理やりネグリジェを着ていたのだ、おジジの頭のままで。声は痰が絡んだようでジジむさく、それなのにあのけばけばしい化粧・・・気の触れた人としか思えない。ま、でもいいんじゃない?ハロウィーンらしい人物で。