義兄と地下室

夫と長男と揃って、久々の5人家族全員集合だ。
私はゼッタイに一人暮らしが出来ないであろう、ひどい淋しがりやである。
うちの隣りが女性の一人暮らしである。
それも賑やかな街中だったらまだしも、こんな山の中でである。
信じられない。屋根の雪下ろしとか、停電の時の井戸モーター操作とか、井戸水のフィルター交換とか、ビンの蓋が開かない時とか、泥棒が入った時とか、いったいどうするんだろう。
私には想像も出来ない。
私は今の家に住んで14年ほどになろうとしているが、その間に夜たった一人でいたのは数えるほどしかない。本当に恐い。
もしかして淋しがりやではなく、恐がりやなのかも。
地下室から意味不明の物音なんかしたら、もう心臓が飛び出しそうにドキドキする。
昼間でも、一人の時に地下室に下りていくのはあまり好きではない。
亡くなった夫の兄が残した家具などがたくさん置いてある。
ギイというのがこの義兄の名前だが、彼は亡くなった後も、義母や義妹の家に出没していた。
玄関のチャイムまでご丁寧に鳴らし、ドアを開けずにフワッと通り抜け、階段をすーっと音もなく上り、しばらく2階を歩き回り、また下りて来て玄関から出て行ったり、我が家にはなんと亡くなる直前にやって来たり・・・。
それも彼の目は透明なくらい青いので、なんだか幽霊になられるとすごく怖いのである。
デブだったらちっとも怖くないのだが、スラッとしていていかにも幽霊体型である。
だから昼間でも薄暗い地下室は、よほどの用がない限り行かないようにしている。
地下室をきれいにいくつも部屋を作ったり、オフィスのように使う人も多いが、我が家の地下室は丁度映画の「ホームアローン」や「ベートーベン」に出て来る家と同様だ。
そのうち子供部屋や客用寝室を増やして、明るい地下室にしたいものだ。
いや、地下室という言葉が悪い。せめて地下一階と呼べるようにしよう。